持続可能な観光地づくりとエコツーリズム

山中湖のイメージ


2006年に約20年ぶりに見られた山中湖の全面結氷。冬には気温が氷点下20度近くまで下がる。

 あなたは山中湖に対してどのようなイメージを持っているでしょうか。富士五湖で行われたこれまでの調査結果によると、緑や自然が豊かで標高約1千mに位置していることから、ゆったりできる避暑地というイメージを来訪者の多くは持っているようです。また、テニスや乗馬ができるということから、スポーティでにぎわいのあるイメージがある一方で、俗化した雰囲気や人が多い、多すぎるといったマイナスのイメージも同時に持たれているようです。

山中湖が直面する問題や課題

 多くの人が訪れることは、わが国有数の観光地・リゾートである山中湖にとって歓迎すべきことですが、過剰利用によって希少な動植物が減少し、ゴミや土壌の流出によって自然歩道が荒廃するなど、せっかくの観光資源が劣化するという問題が生じています。また、来訪者の期待や要求に応えていこうとするあまり、施設等を過剰に整備することによって景観破壊となってしまった例も見られます。さらに、車や人の多さによって、静かに自然を楽しめないなどの心理的な混雑も問題となっています。

エコツーリズム


野外における解説と体験は、来訪者「地域理解」を助けるために重要である。論より証拠、百聞は一見に如かずである。実際に体験してみたい。

 初めてエコツーリズムという言葉を目にする方もいらっしゃるかもしれませんが、エコツーリズムとは「自然環境や歴史文化を体験しながら学ぶとともに、その保全にも責任を持つ観光のあり方」(注1)のことです。一般的には次のように大きく三つの目標(効果)があると言われています。まず、一つ目は「環境保全」です。前述の山中湖で起きている問題を解決するために、エコツーリズムという考え方に沿うことで、地域の資源の保全にむけて来訪者と地域住民が一緒になって取り組んで行くことが可能となります。二つ目は「経済効果」です。山中湖の場合は、春から秋までの週末に大勢の来訪者がある一方で、冬期には訪れる観光客も少なく、冬期の観光振興が長年課題となっています。また、ゴールデンウィークや夏休み期間に集中することによって、サービスが低下するなどの弊害が生じている可能性があり、閑散期の振興と混雑期における集中の緩和を図っていくことによって、意味のある経済効果を生み出すことができます。三つ目は「地域理解」です。わが国におけるこれまでの観光形態は名所見物型に代表されますが、今後は体験学習型へと移行していく必要があります。より深く山中湖を知ってもらうためには、中長期で滞在型の旅行ができるような社会的環境も必要ですし、実際に山中湖に足を運ばれた方に対して、ガイドが地域の解説を行い、体験を提供することも効果的な方策となるでしょう。

持続可能な観光地づくり

 山中湖には、後に紹介されるように、豊かな自然と文化があります。また、別荘居住者のように準住民ともいうべき来訪者との交流の歴史があり、その深層に触れてもらうためにはそれなりの工夫が必要です。山中湖村エコツーリズム推進協議会においても、そのためのお手伝いをする人材の育成の必要性が指摘され、ユニバーサルなもてなしにむけた議論が始まっています。そのような議論と具体的な取り組みを行っていく上で、最も大事な点は「持続可能性」ということではないでしょうか。持続可能性を考慮して「環境保全」を図っていく場合は、資源の質が良好に保たれているのかモニタリング(監視)をしていく必要がありますし、「経済効果」が一部の人やモノ、情報に集中的に分配されないようにバランスについて考慮する必要があります。また、「地域理解」のためには、来訪者の体験の質を維持にむけてガイダンス(解説)やツアープログラムを向上していく必要があります。

地域づくり


花見は日本人の伝統的な観光形態である名所見物型のものである。山中湖で推進するエコツーリズムはこうした観光形態をより体験学習型へ移行しようとしている。

 エコツーリズムに考え方に沿った観光地づくりは始まったばかりです。来訪者と来訪者を受け入れる地域とが一体となって、よりよい観光地としていくためには、相互の交流と理解、地域をつくるという共通した視点が欠かせないように思われます。

注1)環境省編(2004):『エコツーリズム−さあ、はじめよう』:財団法人日本交通公社

東京大学富士演習林・山本清龍

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