植物

山中湖の環境特性


ヒオウギ

 山中湖村は富士山の北東麓に位置していることから、富士山と密接な関わりを持ち、山中湖村に生育する植物種にも富士山の環境を基盤にした特徴的な分布が見られます。特に、太平洋側から常に吹きつける暖気流は富士山の高山に遮られて富士山の東西を迂回して流れ、丹沢山地、御正体山地や御坂山塊、天子山地に接して気流の滞留が富士山の北東と北西に発生します。あの有名な熔岩台地に発達した青木ヶ原樹海と山中湖は、この気流の滞留する地域に位置しているのです。青木ヶ原樹海と山中湖村では地質の違いから生育する種に違いがありますが、共通して、空中湿度の高い地域に生育する植物が多く見られます。富士山の噴火の歴史を見ると、河口湖の剣丸尾熔岩流と青木ヶ原熔岩流は、ほぼ同時期に噴火したものですが両者の現存植生にはおよそ数百年の違いが見られ、富士山の形成がもたらした青木ヶ原樹海の環境が植物の遷移過程に大きく影響したことが分かります。

富士山北麓に見られる植物


ユリワサビ

 前項でご紹介したように、富士山北麓では山中湖村周辺と本栖湖〜青木ケ原樹海周辺に高い空中湿度を好む植物が多く生育しており、富士山の北部(鳴沢村〜富士吉田市)周辺ではやや乾燥した土壌を好む植物が生育しています。一例を挙げると山中湖村周辺にはヒコサンヒメシャラ(ツバキ科)やユリワサビ(アブラナ科)ハクウンラン(ラン科)などが生育し、青木ヶ原樹海周辺ではヒメシャラ(ツバキ科)ヒメハッカ(シソ科)アリノトウグサ(アリノトウグサ科)などがみられ、これらの植物種は富士山の北面には生育していないことなどから、当地域の環境指標植物ともいえます。

植物と人


太平洋側からの暖気流に乗った雲は、富士山を迂回して流れる。

 山中湖村は古くからリゾートとして発展してきたことや他の地域と違って近代農業を主とした産業基盤を持たないことから薬剤散布や化学肥料の投与が少なく、他の地域に比べて、自然環境に与える影響が少なかったことが生物の多様性を育んできたものと考えられます。また、毎年野焼きによる草原維持が継続されてきた結果、草原性の希少種など、山梨県のレッドデータ植物のうち山中湖村だけに分布する種が20種以上も見られ、生物の多様性に富んだ地域と言えます。

NPO法人富士山自然学校
渡辺長敬

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